FieldMiddleware で Field Permissions を実装する
この記事は Zenn で投稿していた内容を移行したものになります。
本記事は Code First を使用したプロジェクトにのみ適用できます。
はじめに
GraphQL で API を実装していて、ある Type のフィールドに対してアクセス制御を適用したいといったケースが考えられます。たとえば、ログインユーザーはアクセスできる、特定の権限を持つユーザーのみアクセスできるといったものが挙げられます。
上記のようなフィールドに対する制御を NestJS では FieldMiddleware を使うことで実現できます。本記事では NestJS のプロジェクト作成から FieldMiddleware の適用までを解説します。
この記事で作成したコードは下記リポジトリから確認できます。 https://github.com/choco14t/field-middleware-example
FieldMiddleware について
FieldMiddleware は名前のとおりフィールドを解決する前後に処理を追加するための機能を提供します。
FieldMiddleware は関数で定義し、MiddlewareContext
と NextFn
型の 2 つの引数を受け取ります。 MiddlewareContext
は Nest が定義している型ですが、渡される値は GraphQL Resolver が受け取る値({ source, args, context, info }
)と変わりありません。値の詳細については GraphQL 公式ドキュメント を参照してください。
注意点として、FieldMiddleware は DI コンテナにアクセスできません。もし外部 API の実行や DB へのアクセスを行いたい場合は MiddlewareContext
から受け取れるようにする必要があります。
context と組み合わせた実装例
以下の内容を例として実装を進めていきます。
- id から単一のユーザーを取得できる
Query.user
を定義する - User は id、name、email のフィールドを持つ
- email は管理者権限を持つユーザーのみがアクセスできる。それ以外のユーザーが取得しようとした場合は null を返す
今回は下記を使用してプロジェクトを作成します。
- @nestjs/cli 8.2.6
- yarn 1.22.19
- Node.js 16.15.0
nest new field-middleware-example
また、Quick start に倣って Express、Apollo を使用します。
yarn add @nestjs/graphql @nestjs/apollo graphql apollo-server-express
GraphQLModule の import
まずは AppModule
に GraphQLModule
を import します。
import { join } from 'path';
import { ApolloDriverConfig, ApolloDriver } from '@nestjs/apollo';
import { Module } from '@nestjs/common';
import { GraphQLModule } from '@nestjs/graphql';
@Module({
imports: [
GraphQLModule.forRoot<ApolloDriverConfig>({
driver: ApolloDriver,
autoSchemaFile: join(process.cwd(), 'src/schema.gql'),
sortSchema: true,
}),
],
})
export class AppModule {}
UserModule の作成
この時点でアプリケーションを起動しようとすると、Query または Mutation の定義がされていない旨のエラーが発生します。まずアプリケーションを起動できるよう UserModule
を作成していきます。
nest generate module user
# output
CREATE src/user/user.module.ts (81 bytes)
UPDATE src/app.module.ts (478 bytes)
次に Type を定義します。今回はアクセス制限のある email
と常にアクセスできる name
を定義します。この時点では email
、name
どちらも常にアクセスできます。
import { Field, ID, ObjectType } from '@nestjs/graphql';
@ObjectType()
export class User {
@Field(() => ID)
id: string;
@Field()
name: string;
@Field({ nullable: true })
email: string;
}
次に Resolver を作成します。
nest generate resolver user
# output
CREATE src/user/user.resolver.spec.ts (456 bytes)
CREATE src/user/user.resolver.ts (86 bytes)
UPDATE src/user/user.module.ts (158 bytes)
記事内では値の確認ができれば良いので、固定値を返す Query.user
を定義します。
import { Query, Resolver } from '@nestjs/graphql';
import { User } from './user.type';
@Resolver(() => User)
export class UserResolver {
@Query(() => User)
user() {
return {
id: '1',
name: 'user 1',
email: '[email protected]',
};
}
}
ここでアプリケーションが正常に起動され、クエリが実行できるようになりました。
context のセットアップ
次にログインしているユーザーを保持するために context を設定します。context は GraphQLModule で定義できます。
余談ですが、context が未定義の場合は使用している Apollo パッケージであらかじめ定義されているオブジェクトが context として設定されます。NestJS の場合は以下のどちらかがデフォルトで設定されます。
フレームワーク | context |
---|---|
Express | { req: Express.Request, res: Express.Response } |
Fastify | { request: FastifyRequest, reply: FastifyReply } |
今回はリクエストの Authorization ヘッダーを確認し、アクセスしているユーザーを判別するようにします。型やダミーデータはひとまず AppModule
にベタ書きします。
import { join } from 'path';
import { ApolloDriverConfig, ApolloDriver } from '@nestjs/apollo';
import { Module } from '@nestjs/common';
import { GraphQLModule } from '@nestjs/graphql';
+ enum ViewerRole {
+ MEMBER,
+ ADMIN,
+ }
+
+ interface Viewer {
+ userName: string;
+ role: ViewerRole;
+ }
+
+ interface AppContext {
+ viewer: Viewer | undefined;
+ }
+
+ const users: Viewer[] = [
+ { userName: 'user_1', role: ViewerRole.MEMBER },
+ { userName: 'user_2', role: ViewerRole.ADMIN },
+ ];
@Module({
imports: [
GraphQLModule.forRoot<ApolloDriverConfig>({
driver: ApolloDriver,
autoSchemaFile: join(process.cwd(), 'src/schema.gql'),
sortSchema: true,
+ context: ({ req }): AppContext => {
+ const token = req.headers.authorization || '';
+ const viewer = users.find((user) => user.userName === token);
+
+ return { viewer };
+ },
}),
UserModule,
],
})
export class AppModule {}
FieldMiddleware の実装
管理者権限を持つかを判別する hasAdminRole
を実装します。
FieldMiddleware
は FieldMiddleware<TSource, TContext, TArgs, TOutput>
の Generics で、引数はそれぞれ次の型情報と対応しています。
引数 | 対応する型情報 |
---|---|
TSource | 渡されたフィールドの ObjectType。 |
TContext | GraphQL サーバで定義した context。本記事では AppContext となる。 |
TArgs | フィールドで使用される引数。引数がない場合は {} となる。 |
TOutput | FieldMiddleware が返却する値。 |
上記の引数と照らし合わせると、実装は下記のようになります。
import { FieldMiddleware } from '@nestjs/graphql';
import { AppContext, ViewerRole } from '../../app.module';
import { User } from '../user.type';
export const hasAdminRole: FieldMiddleware<User, AppContext> = async (
ctx,
next,
) => {
const {
context: { viewer },
} = ctx;
return viewer?.role === ViewerRole.ADMIN ? next() : null;
};
hasAdminRole
内で TSource
の参照は行われていないですが、User
に対して使用する Middleware なので明示しています。
FieldMiddleware の適用
前項で実装した FieldMiddleware を User.email
に適用します。FieldOptions
の middleware
プロパティに適用したい FieldMiddleware を配列で渡すことにより動作します。
import { Field, ID, ObjectType } from '@nestjs/graphql';
import { hasAdminRole } from './field-middlewares/check-admin-role.middleware';
@ObjectType()
export class User {
@Field(() => ID)
id: string;
@Field()
name: string;
+ @Field({ nullable: true, middleware: [hasAdminRole] })
email: string;
}
動作確認
最後に FieldMiddleware が動作するか確認してみます。
# 管理者権限でないユーザでのリクエスト
curl -H 'Content-Type: application/json' -H 'Authorization: user_1' -d '{ "query": "query { user { email } }" }' http://localhost:3000/graphql
# output
{"data":{"user":{"email":null}}}
# 管理者権限を持つユーザでのリクエスト
curl -H 'Content-Type: application/json' -H 'Authorization: user_2' -d '{ "query": "query { user { email } }" }' http://localhost:3000/graphql
# output
{"data":{"user":{"email":"[email protected]"}}}
さいごに
簡易的な FieldMiddleware を定義し、ObjectType に適用するまでを行いました。FieldMiddleware は複数適用させたり、グローバルに適用してアプリケーション全体にも適用できるので興味がある方は試してみてください。
NestJS は Code First で実装する上で便利な機能が提供されています。しかし、FieldMiddleware に関しては graphql-shield と比較すると or
のようなルールのいずれかを満たすか判別する機能が提供されていないため、複雑なルールを適用したい場合は FieldMiddleware だと実現が難しくなります。
NestJS 上で graphql-shield を使うことも可能ですので、プロジェクトに応じてライブラリを使い分けると良さそうです。